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藤原武男の研究室

日本の母親の養育行動における、子ども時代の被虐待歴、家庭内暴力被害、及び精神的問題の影響

本研究の目的は子ども時代の被虐待歴、家庭内暴力被害そして精神的問題が日本で暴力的な夫・パートナーと別居した母親の養育行動に及ぼす影響を測ることです。日本全国83の母子支援施設に入居している304人の母親に自記式のアンケートを配布・回収し、母親の子ども時代の被虐待歴(身体的・心理的・性的虐待とネグレクト)、家庭内暴力被害、現在の精神的問題(解離性・うつ的・トラウマ性症状)、及び、暴力的な夫・パートナーとの別居のための施設入居後の母親の養育行動を調べました。

母親の子ども時代の被虐待歴と家庭内暴力被害は、子どもと遊ばないこととは有意に関連していなかった一方、母親の解離性とうつ的症状は遊ばないことと有意に関連していました。母親の子ども時代の被虐待歴の合計点と子どもを褒めないこととの関連は見られませんでしたが、子ども時代の身体的虐待歴は子どもを褒めないことと有意に関連していました。解離性とうつ的症状もまた褒めないことと有意に関連していました。興味深いことに、家庭内暴力被害は、子どもを褒めないこととは負の関連を示しました。

精神症状、とりわけ解離性とうつ的症状は、養育行動の質の低下と関連していました。子ども時代に身体的虐待を受けた母親は、精神症状とは独立して、自分の子どもを褒めることが少なくなるようです。反対に、家庭内暴力の被害を受けていたが後に暴力的な夫・パートナーと別居した母親は、自分の子どもを褒めることが多くなるようです。精神症状、とりわけ解離性とうつ的症状の治療、子ども時代の被虐体験の治療、そして暴力的な夫・パートナーとの別居は、日本においては養育行動の質を高めるために有用な手段と言えるかもしれません。


Fujiwara T, Okuyama M, Izumi M. The impact of childhood abuse history, domestic violence, and mental symptoms on parenting behaviour among mothers in Japan. Child: Care, Health and Development (IF2011=1.201). 2012;38(4):530-537.